英語学習ソフト「添削くん」を用いた英語科指導 平田啓一、森岡茂樹、赤木伸 文部科学省から1999年度に委託されて開発した英語学習ソフト「添削くん」を、2000年1月から中学1, 2, 3年生に長期間に渡って利用させた結果を、アンケート・データを中心に考察する。「来年度への英語科に対する自由な希望」は「添削くん」をもっと多く使うことであった。このソフトを「楽しい」、「力がつく」と評価する生徒が大多数を占めた。「書く」ことに役立つとし、使用頻度はレッスンごとを、使用形態は個別を望んでいる。<キーワード> CAI, 英語科指導、多彩な正答、個別学習、文部科学省委託
1. 英語学習ソフト「添削くん」の概要 本ソフトは1999年度文部科学省学習用ソフトウェア研究開発で委託された英語学習用ソフトウェアである。また、2000年度に文部省生涯学習局情報課によって選定されて、「まなびねっと」(http://www.manabinet.jp)で紹介されている英語学習CAIソフトウェアである。 まず動作の具体例を示そう。課題「私は猫が走るのを見た」に、生徒Aが I saw a cat ran.と答えると、巻物ヒントが開いて「seeは知覚動詞だから、原型動詞runを使う。」と表示される。そこで生徒Aが訂正すると、「正しい。8点」と出る。この課題に生徒Bが I saw cat run.と答えると、「theはどうかな」と添削される。生徒Cが I saw a cat running.と答えると「正しい。10点」となる。正答は単一ではなく、生徒はかなり自由に答え得る学習ソフトである。 本ソフトウェアは教室現場の生徒一人ひとりの聞き取りに対する応答のチェック不足問題を解決する一つの方策である。すなわち、ネイティブ・スピーカの発声する英文の「聞き取り」をさせて、(1)ディクテーションさせることも、(2)課題に対する自由な応答をさせることもできる。回答はキーボードから入力させ、本ソフトウェアによって直ちに添削する。つまり、生徒の回答が完璧ではなくても、より正しいものへと添削する。また、単一な回答を要求するのではなく、かなり自由に回答することができる。これによって生徒は単なる暗記ではなく、自らの回答を作る喜びを持って学習することができる。国際コミュニケーションにとって重要であり、しかも生徒にとって英語学習中でもっとも難しい行動の一つであるリスニングの力をつけさせることを本ソフトウェアはねらっている。 「単語モード」と「選択肢モード」では日本文や英文の中から正答を選ばせる。「並べ替えモード」ではランダムに並んだ英単語を正しく並べ替えさせる。「文字数ヒント・モード」と「チャレンジ・モード」では自由に英文をタイピングさせる。「復習モード」では生徒本人が誤った英文を訂正させる。 これらの問題形式はすべて自動生成されたもので、教材作成者が一つ一つ用意したものではない。教材作成者は課題文と模範英文の対だけを用意してデータ・ベースへ登録すればよい。 このソフトは岡山県高梁市、大阪府大阪狭山市で使用中である。 2. 「添削くん」に対するアンケート結果 このアンケートは、岡山県高梁市立高梁中学校で「添削くん for English」を2000年1月から2001年3月末まで一年余り使用した、2年生5クラス154名の意見を収集したものである。このアンケートは14項目から構成されていて、最後の項目は「来年度への自由な希望」を書かせている。最大数の望みは「もっと多く使う」であり、これは回答総数160中で52名(33%)、「今後も使う」が18名(11%)であった。 このソフトを「楽しい」とする生徒が124名81%、「楽しくない」は2名1%であった。また、「力がつく」とする生徒が94名61%、「力がつかない」は10名6%であった。つまり、大半の生徒が「添削くん」ソフトは楽しく、力がつくと評価している。 役立つ分野は「書く」(83名)と「聞く」(70名)のに役立つと答えている。好きなモードは一般的に眺めるとゲーム性のある「並べ替え」モードが好まれている。しかし、クラス別に見るとB組やD組は「文字数」モードを好んでいる。B組はもっともハードである「チャレンジ」モードもかなり好んでいる。作成者から見ると、これらの2つのモードは必ずしも楽ではないが、もっとも学習に役立つと考えている。このように組によって好みに変化がある。このことは多く学習したモードでも同じ傾向で一般的には「並べ変え」モードが多く、B組では「文字数」と「チャレンジ」モードを学習した生徒が多い。 このソフトを教室で使用する時期はレッスン終了時を望み、使用頻度はレッスンごとか毎週1回を望む生徒が多い。使用形態は個別を望み、ヘッドセットの使用は強制せずに自由にして欲しいと願っている。つまり、生徒は一般教室での普通の授業、ALTなどの授業と共に、コンピュータ教室での個別学習も強く望んでいることがわかる。 3. 考察 高梁中学校における1年生時の実践は、2000年全日本教育工学研究協議会高知大会で発表しているので、ここではそれ以降、2年生時と3年1学期において取組ませた結果考えたことを述べてみたい。 アンケート結果を見ても明らかなように、生徒たちは「添削くん」を、楽しくて、力がつく教材と評価している。 とても興味深いのは、学年が上がっていくほど、このソフトを使いたいという意識が高まっているという点である。学年が上がるにつれて英語学習に対する興味が失われていくのが常である中学校の英語教育現場を考えると、このことは画期的なことのように思われる。 その理由としては、主に次の2点が考えられる。 (1) 個々のレベルやペースに応じて学習に取り組める。
(2) コンピュータを使った学習である。
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